お祝いワイン、チロを飲む。南イタリア「勝利の美酒」
お祝いのワインといえば
春が近づき、試験の合格や昇進といったお祝い事がある人も多い時期ですね。
お祝いのワインには王道のシャンパンももちろんぴったりですが、
今回は、ちょっと珍しいイタリアの赤ワインを紹介します。
勝利の美酒というと、まずはフランスのボルドー地方にあるメドック地区の格付け4級、シャトー・タルボのフラッグシップである「タルボ」が最初に思いつきます。
有名な漫画『神の雫』で勝利を祝うワインとして登場したこともあり、ラベルが頭に浮かぶ人も多いのでは。
タルボは名前の由来であるイギリスの英雄にふさわしく、骨太で力強く、かつ親しみやすい赤ワインです。
(ちなみにボルドーの格付けにはメドック地区の他にグラーヴ地区、サン・テミリオン地区、ポムロール地区、ソーテルヌ地区もあります)
オリンピック勝者に授与された赤ワイン、チロ
ただ、タルボは日常的に飲むものではなく高級路線の超名門赤ワイン(その中では大衆にも親しみやすい味と価格ですが)。
イタリアにも、飲みやすくて手に取りやすい「勝利の美酒」をルーツに持つ赤ワインがあるんです。
ワインエキスパート試験対策の勉強をしているときに知ったのですが、
南イタリアのカラブリア州(下図)で造られる「チロ」という銘柄。
ブドウは土着品種のガリオッポ(美しい足という意味だそうです)。
古代のオリンピックで勝者に振る舞われたクリミサというお酒が、現在のチロのルーツとなっています。
実際に、2004年アテネオリンピックの勝者には、チロが贈呈されています。
タルボが安くても8,000円はすることを考えると、チロは1,500円程度から購入できるため懐にもフレンドリーです。
チロの味わい
気になるお味はどうでしょうか。
たまたまお店で見かけたので飲んでみました。
ざっくり言うと、陽気で程よい飲みごたえがある、飲み会向けな赤ワインです。
以下、テイスティングコメント練習記録(毎度のことながら完全に個人の見解です)。
テイスティングコメント
外観は澄んでいて輝きがあり、レンガ色に近い明るいダークチェリーレッド。粘性はやや強い。
熟した果実の香りがして、深みや熟成感を感じます。
※2017年のものでしたが、このボトルはけっこう進んでいる印象(酸化熟成が)。個体差でしょうか。若々しいものであれば、果実味やフレッシュさが際立っていることでしょう。そちらも魅力的でとても良さそうです。
チェリーリキュール、ドライフルーツ、バラなど赤い花のドライフラワーといった枯れ感のある香り。
黒いオリーブ、干し肉、ローリエ、針葉樹、クローブなどスパイシーで男性的な印象もあります。
それから少しヨード……というか塩味がします。海のワイン、というやつですね。
味わいは口に含んだ時のアタックが強めで爽やかな酸味と力強いタンニンがあり、しっかりとした骨格を感じます。
ミディアムボディですがアルコールは14%と飲みごたえがあり、
北イタリアでいうとネッビオーロというブドウ品種に似ています。
ネッビオーロと比較するとやや陽気(鬱蒼とした森の香りではなく乾燥した土の香りや黒オリーブの香りがする)。
アルコール由来と思われる熱やボリューム感が楽しい、活気あふれるワインでした。←この辺は生産者によってまた違ってきそうです
キャンティ(イタリアで最も有名なバランスのよい赤ワイン……念のため書きます)と比べると、ややあっさりしています。
今回は熟成が進んだ状態でしたが、もっと若いものも飲んでみたいと思えました。
勝利の美酒がルーツということで、
仲間たちと食事を囲んで、達成感に満たされながらチロをグッと呷るというシチュエーションは想像しやすいと思います。
ちなみにアテネオリンピックで贈呈されたチロの生産者はヴィニコラ・ジートですが、
メーカー終売のため品切れという店舗が多く、私はまだ試せていません。。
唐辛子に合う、珍しいワイン
合わせる料理は、ペペロンチーノのような唐辛子の効いた食べ物が合うといわれています。
地元では唐辛子料理と合わせて飲むそう(ちなみに唐辛子に合うワインはとても珍しいです!)。
海の要素がワインにあるので魚介もいいし、グリルした肉や魚の入ったサラダや、オリーブオイル系の焼き物にも合いそうです。
このボトルに関して言えば、枯れ感に合わせてサラミ、ナッツ、ドライフルーツといった、干した食材がいいかもしれません。
個人的には粉チーズと黒コショウたっぷりの温泉卵カルボナーラが食べたくなりました。
品質向上で今後に注目
昔、イタリアワインブームに乗り遅れてしまった、、などといわれるカラブリア州のワイン(2022年現在もDOCG認定銘柄は1つもなし)ですが、日本ソムリエ協会教本によれば「近年は醸造技術や生産者の意識の変化により、喜ばしいワインが増えてきた」ということです。
今後も大注目なお祝いワイン、たまたま見つけて飲んだにしては発見が多かったのでおすすめです。
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