校正の仕事内容2:組版ルール
校正の具体的な仕事内容について、先日の記事では全体の流れを説明しました。
ここでは「どんなことに気づけばいいか」を掘り下げていきます。
大前提として、書籍の校正では文章がレイアウトされた校正紙(ゲラ)を見ます。
誤字脱字のチェックは当然行うとして、
ゲラが組版ルールに沿ってレイアウトされているか確認するのも当たり前のことです。
つまり、組版ルールを知らなければ誤りがあっても気づかず指摘できません。
校正者のバイブルともいえる『校正必携』という書籍には組版ルールや赤字の入れ方が載っているので、一度は目を通すといいでしょう。
この記事では、組版ルールの中でも実際によく指摘が入るものを紹介していきます。
全角と半角
統一すべきルールとして、全角と半角があります。
たとえば一冊の書籍の中で、特別な理由がなければ123……といった数字は半角が普通。
(一ケタのものだけ全角という場合もあります。全角1字扱いとなり文字組みにズレが生じないため)
これがバラバラの原稿はわりとよく見かけるので、ゲラにする前の段階で統一しておくと手間が省けますし、ゲラで見かけたら、ぜひ統一したい部分です。
以下のものが、特に全角半角で揺れがちです。
カッコ
( (全角カッコ)と((半角カッコ)は字の形や前後の空白が微妙に違います。
(ここでは簡単に説明するため、全角カッコは和文物、半角カッコは欧文物を指します)
地の文が日本語なら基本的に全角カッコに統一のことが多いです。
ただし、数式や化学式などの場合には、その部分を半角カッコとする場合もよくあります。
フォントによっては全角カッコと半角カッコが見分けにくいことがあるため、判断に迷う場合は鉛筆で要確認の旨を記します。
ちなみに和文物・欧文物というワードが気になった方はぜひ調べてみてくださいね。ここでは簡単に紹介しておきます。
日本語フォントには全角と半角のカッコがあり、
アルファベット用の欧文フォントには半角のカッコしかなく、日本語のフォントとは区別されます。
和文と欧文、そして文字クラス(記号か文字かといった種類の区分)は、組版ソフトの設定上非常に重要な分類です。
自動で入るスペースの幅が変わったり、行をまたぎそうなときに自動で調整が入るからです。
一番上が全角カッコ
真ん中が半角カッコ(日本語フォント)
一番下が半角カッコ(欧文フォント)
数字
数字は算用数字123……を半角で用いるのが一般的です。
が、書籍や出版社によってハウスルールが違うこともあるので、細かい部分はそちらに従います。
一冊の書籍の中で全角と半角が揺れている場合、区別があるかどうか質問したり統一を促したりします。
フォントによっては見分けにくいこともあるので、違和感があるけど確信できないということもよくあります。
そんな場合は鉛筆で要確認の旨を伝えるとよいと思います。
その他の記号
・(中黒)/(スラッシュ)=(イコール)などが、よく全角半角入り混じる代表格です。
/(スラッシュ)に関しては、本文でandあるいはorの意味で使っているときと、
km/hといった単位などに使っているときで使い分けがある場合もあるため、
盲目的に指摘を入れないよう要注意です。
km/hなどであればまだわかりやすいのですが、
薬の投与量でmg/kg/日などと日本語の単位が混ざると揺れやすく、工夫が必要です。
禁則
文字の種類によって、配置してはいけない場所があります。
それを破っている場合は指摘し、場合によっては処理方法を鉛筆で提案します。
禁則には大きく3種類あります。行頭禁則、行末禁則、分離禁止です。
(インデザインなどのDTPソフトではあらかじめ禁則処理を設定できるのですが、設定がうまくいっていないと禁則が生じます)
行頭禁則
。、(句読点)や」)】(受けカギ)などが行頭に来てはなりません。
もし行頭に来ていたら、行頭禁則である旨を指摘します。
大体の場合、その指摘だけでOK。DTP作業者が禁則処理設定や字詰めを調整して処理してくれます。
段落内の他の箇所に文字の削除や追加がなければ、どのみち追い込む(行内に収める)か追い出す(次の行に送る)かしかありません。
ー(音引)、ゅっ(拗促音)、々(同の字点)、・(中黒)については両説あって、パンフレットなど組版調整の自由度が低いものでは行頭を許容する場合もあります。
行末禁則
「(【((始めカギ)などが行末に来てはなりません。
行頭禁則と同じく、指摘します。
分離禁止
——……(二倍で使う記号)、kg(単位)、1,000(ケタの多い数字)、proof(英単語)、向日葵(グループルビ)が行をまたいではいけません。
調整する場合は前後の文字ごと前の行か後ろの行にまとめて移動させます。
その結果、行によってはかなりゆとりができてしまう場合もありますが……そこはDTPオペレーターの腕に任せるところかと思います。
実際にあった例としては、横組みの書籍で英単語が連発する教科書、
縦組みでくの字点(下図左)が連発する研究書(横組みのくの字点もあり、向きに悩んだ)というのを経験しました。
行の中で字がぱらついてしまうのは気になりますが、組版ルールに沿って割り付けているため仕方ないのですよね。。
この記事で紹介した禁則ルールは『校正必携』にも記されています。
もしこれから仕事で校正をしようという場合は読んでみてくださいね。
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