鯛の昆布じめとソアーヴェ

2022年3月25日

このところ、急に暖かくなってきました。
寒いと赤ワイン、暑いと白ワインが飲みたくなる単純な体をしているため
イタリアの白ワインを飲みました。
今回は、たまたま作ってあったおつまみとのペアリングも良かったので記録しておきます。


イタリアワインは基本的にお買い得

1,000円台のものだと当たり外れの差が大きくて、レビューの星の数を見ないと安心して買えない」
という悩みはワイン選びにおいてかなりポピュラーなのではないでしょうか。
個人的には南仏イタリアニュージーランドのワインは、適当に選んでもおいしく楽しめるものがいっぱいあると思っています。
特にイタリアのワインは総じて飲みやすく、手に取りやすいものが多いと感じます。
値段も、500円とかだとさすがにそれなりの味わいですが、1,000円台で十分楽しめるものは多い
そのため、基本的にコスパのいいワインにあたる確率が高い生産地と認識しています。

もちろん上記の生産地は高級ワインも多数あるし、そちらは言うまでもなくおいしいですよ。
ただ、家飲みで選ぶワインの価格帯といえば、1,000円前後〜3,000円未満がボリュームゾーンな気がするので
この範囲内で値頃感のあるワインを開拓すると、日々の満足度が上がるというわけです。

爽やかな海の白ワイン、ソアーヴェ

ソアーヴェはヴェネト州(下図)の代表的な白ワイン。名前を聞いたことがある人は多いと思います。

使用しているブドウ品種はガルガーネガ。
レモンや白い小花の香りとフレッシュな柑橘・青リンゴ・時には洋梨などの味わいに、爽やかな酸味が特徴です。
海沿いで収穫され造られるワインには潮の香り(ミネラルやヨード香)がするといわれるように、海のニュアンスがあるため魚介類と相性がとても良いです。

今回飲んだソアーヴェは限定地域産(「クラシコ」を名乗れるもの)ではありませんし、
三大ソアーヴェと呼ばれる代表的な造り手イナマ、ジーニ、ピエロパンのものでもありません。
価格は1,500円程度でソアーヴェとしてはごく一般的
でも、バランスがよくて軽めの白ワインとしてはかなり使い勝手がよい、
つまり色々なものに合わせやすくシーンを選ばず飲みやすいと思いました。
軽めだけど、ワインの中に塩気オイリーな要素もあるので幅広く食事に寄り添えるのですね。

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鯛の昆布じめとソアーヴェがなぜ合うのか

とはいえ、鯛の昆布じめって和食なのにワインと合うのか? と思う方もいるでしょう。
過去記事「生ガキとボルドー赤ワイン」のように、一見合わなそうでも意外にいけるものがあります。
(よく言われる「鴨料理と極甘のソーテルヌ」「中華料理に甘口ワイン」のようなものでしょうか)

実際に合わせてみると、おつまみの昆布の香りが引き立つ
ソアーヴェの新鮮で爽やかなレモンの香りや穏やかな苦味と調和しています。
お互いの良いところを高め、短所になり得る特徴を補い合っている

ちなみに短所になり得る特徴とは、ここでは魚の臭い成分ソアーヴェの苦味のことを指しています。
私自身は苦味のあるワインは好きですが、人によっては苦味をあまり歓迎しない場合もありますよね。
ところが、食事とワインを別々に味わう時と、両者を合わせることで印象が変わることがあります(それがペアリング)。
昆布に自然な苦味(ヨード)があるため、ソアーヴェの苦味はうまくマスクされ美味しく感じる。
また、魚のにおい成分(トリメチルアミンといって、魚を放っておくと身のタンパク質が勝手に分解され、トリメチルアミンとなり放出されるため臭う)はワインの酸と結合することで臭くなくなるのです。
この日食べた鯛の昆布じめは別に生臭くなかったですが……魚のタンパク質は放置すると臭いが出るので、もともと臭いの原料は魚の身に含まれているということですよね。

今回は、魚の臭いやワインの苦味に対して、おつまみ側の苦味成分とワインの酸がお互いに役立ったというわけでした。
これを見ていると「両者に同じ要素が含まれているものなら比較的合いそう」と思えてきますよね。
ワインの生産地と食事の和洋中といったカテゴリはあまり関係なさそうです。
むしろ驚きのある組み合わせ(東欧のオレンジワインと柳川鍋とか)ができるといいですね。
他の魚料理と白ワインのペアリングでも大体大丈夫なので、好きな組み合わせを考えていくと楽しそうです。

参考文献:「魚の生臭さとその抑臭」太田静行
この論文とても面白かったのでお時間あればぜひご一読ください。私も後でじっくり読みます。