校正者に向いている人とは。イメージと実際を紹介してみた

校正者に向いている人とは?

この記事を読んでいるのはたぶん、校正者になりたい人か、校正の仕事を探している人が多いのではないでしょうか。
仕事を始めるにあたって適性が気になるのはとてもよくわかります。
校正作業に興味があるという段階である程度向いているような気もします
(かつて、営業職の先輩が校正のことを「長時間座ってずっと間違い探しは無理」と言っていました)が、
集中力が続くとか、辛抱強いとかいった性質であれば、より向いているかもしれません。

校正者の実際は?

ところで、校正の仕事をしてみたいと思う動機はなんでしょうか。
在宅でできる、副業にしやすい、初期投資が不要、PCひとつで稼げる、、などでしょうか。
今回は、校正者になりたい人が考えるメリットが本当かどうか、
実際に職業に就いていて感じたことをQ&Aで書いていきます。

※本サイトでは、校正と校閲をまとめて「校正」としています。校正者と校閲者という職業名に明確な区分けがなく、一般的に「校正」というと両方を含むように感じられるためです。

Q.黙々と作業でき、対人コミュニケーションスキルがいらない?

A.そうでもない。
作業は黙って行いますが、最低限のコミュニケーションは必要
分からないことを聞いたり、細かい連絡や報告をしたり。
なお、初心者ほど職場の先輩やクライアントに質問すべきことが多くなります。
(これって社会人として働く上では必須であって、校正者だと不要というわけではないと思います。
まめに連絡取れている方が仕事も円滑にいきますし、自分の身を助けると思って頑張りましょう)
ただし在宅ならメールやチャットツールで会話する場合が多いです。喋るのが苦手でも、雑談が苦手でも全然大丈夫
書き言葉はニュアンスが伝わりにくく誤解が生じやすいので、そこだけ気をつけたいところです。

Q.電話が苦手。在宅校正者は電話を取る必要はない?

A.在宅ならほぼ電話は使いません。
たまーにwebで面談や打ち合わせがあるかないか。
オフィスワークで小規模な職場なら、外部からの電話を受けて誰かにつなぐ業務はあるかも。

Q.始めるのにお金がかからない? PCひとつでできる?

A.お金はかからない。調べ物が上手なら、PCだけで作業できなくはない
道具やワードローブの購入は特別必要ないので、そういう意味でのコストはありません。
在宅でPCで作業する場合、大きな画面があったら便利かなと思う程度です。
PCひとつで仕事が完結するかというと、そうなる場合とならない場合があります。
調べながら校正作業をするわけですが、web上で確かな情報が手に入らない場合は図書館などに出向くこともあるでしょう。
よっぽどの専門知識が必要だとか、ニッチな分野の案件を受注するのでなければPCひとつで大丈夫なことも多いです。

Q.第一の読者になれるという充実感はある?

A.(私は)今は別にない。
一度は憧れますよね、第一の読者という立場。実を言うと私も最初の頃は少し誇りに思っていましたが、しばらくするとどうでもよくなってしまいました。
仕事が大量にあったりすると、見るのに必死で、そういうことは頭から離れていくんです。
それに、どちらかというと第一の読者は編集者
たとえば、出版したいと原稿を持ち込まれて、それをまず読み、出版可能かどうかを判断するのが第一の読者としての編集者の仕事です。
(幸いなことに、私は編集者としてこちらも経験があります。それはそれですごく面白かった)
出版するとなったら、どうやって読者の興味を惹くように完成度を上げていくか著者と一緒に考えて作っていく、内容の改変を伴う校正(英語ではcritical proofreading:批判的校正、つまりは添削のような作業)を行っていきます。
この段階では誤字脱字とかあまり見ませんが、第一の読者としてのやりがいは、編集者時代のほうが強く感じていました。

Q.フリーランス校正者は稼げる?

A.人によります。得意ジャンルを持った方がいいかも。
年収いくら、というのは本当に個人個人で異なる世界です。
偉大な辞書の偉大な校正者の方にお会いしたことがありますが、そもそも辞書のような大きな仕事に携われるかは技能や経験や人脈次第だし、報酬も会社や人や案件によって計算の仕方が変わります。
副業として始める場合、駆け出しの時期はクラウドソーシングなどで受注できる何文字○円とか時給○円といった小さな仕事をたくさんこなすことになるかもしれません。
ちなみに、そうした仕事を重ねることが書籍1冊を見る力につながるかどうかは……正直言うとまた別なのではと思います。
副業からプロへ転向を考えるなら、大きな仕事に携われるような下地作り案件探しを熱心にするといいのでは。
また、得意分野があることで専門知識を要する校正を受注しやすくなります。報酬の額が上がるポイントでもあるので、何か興味のある分野にやたらと詳しくなっておくのもおすすめです。

Q.校正者の技能を身につけたら、他の職業で潰しが効く?

A.校正技能だけを使う他職種は思いつかないない。けれど、部分的に役立つ職業は多い。
書くのが好きならライター、ゲームが好きならゲームテスター(発売前のゲームをプレイしてバグを見つける人)などが近い職業かもしれません。
例に挙げた職業はどちらも「見つける」力がメインではなく、「書く」「ゲームが上手い」など他の能力があるのが前提で、そこに「見つける」力を組み合わせたものです。
ライターが校正力も持っている場合、仕事の質が向上し他のライターと差別化を図ることができます。ライティング力が高くて、さらに間違いの少ない原稿は輝いて見えます。冗談抜きで。編集者や校正者から重宝されます……。
こうした感じで、校正力だけで対応できる職業はあまりないものの、他の職業で部分的に役立つ場面は多いかもしれません。

 

今回は、校正者の仕事に対してよく抱くイメージと、実際に経験して感じていることを紹介しました。
黙々と作業することが多いためか、コミュニケーションはいらないのかなと思われがちですが、意外に細かい点の確認が重要になる場面がそこそこあります。喋る機会は確かに少ないため口下手でもまったく問題ありませんが、必要事項の確認や他者への思いやりは人並みにできると仕事がうまく進みます。
職業のイメージと実際が微妙に違うということはよくありますよね。
他にも何か紹介することがあれば、今後、記事を追加していくかもしれません。