リゾナーレ八ヶ岳の日本ワイン24種試飲サービス
ワインリゾートで日本ワインを飲み比べ
山梨と長野にまたがるリゾート地、八ヶ岳
日本ワインの2大聖地といえば山梨と長野。
山梨は甲州市の勝沼地区を中心に、良質なワインの造り手が多数おられるワイン郷です。
長野は千曲川や桔梗ヶ原など複数のエリアでブドウ栽培やワイン造りが行われるワイン名産地。
八ヶ岳は、その山梨と長野の県境にまたがっていて、避暑地としても有名です。
特に清里や小淵沢は八ヶ岳の代表的なリゾート地で、名前を知っている人も多いと思います。
「ワインリゾート」とは
今回ご紹介するのは小淵沢のリゾナーレ八ヶ岳というリゾートホテル。「ワインリゾート」をコンセプトに、さまざまなサービスが楽しめます。
ワインショップやテイスティングルームを備えているのはもちろん、ショップで選んだワインをレストランに持ち込んだり、部屋に好きな種類のおつまみとワイン(ハーフボトル単位)を選んで部屋に持ち帰れたり。部屋にはタンブラー型のワイングラスとソムリエナイフがありますから、買ったワインを部屋でも飲める。
ワイン好きにはたまらない、そんな場所です。
大人同士はもちろん、ファミリーでも楽しめるようなレジャー施設もたくさんあります。
日本ワインを多数試飲可能
山梨と長野の間にあるリゾート地なだけあって、両県のワインを合計24種類試飲できます。
直接ワイナリーに行けば試飲できるワインは数多くありますが、各地に点在する生産者のワインを同時に比べられる機会は意外とないものです。
日本ワイン自体もいろいろなスタイルがあり、流通量が少ないため、好みのものを探すとなるとけっこう労力が必要になるんですよね。
こうして1か所にたくさんのワインが集まっているところで試飲するのも、なかなか楽しいリサーチになります。
なお、ここでは定量をきっかり注いでくれるマシン(エノマティック)が導入されていました。
ワインバーなどで使ったことがある人はわかるかもしれませんが、25mlや50mlといった少量を200円〜500円程度で飲めるものです。
ワインカードを使用し、セルフサービスでワインを注ぐので自分のタイミングで選んで飲みます。
今回テイスティングできたのは10種類。24種のうち半分弱ですが、けっこう試せたなと思います。
それでは紹介していきます。
試飲ラインナップ
テイスティングしたのは白4種、ロゼ1種、赤5種の合計10種類です。
その日は全部で24種類ありましたが、一度に比較する数と、酔いすぎない酒量をふまえて絞りました。
ワインを選んだ基準は次の通り。
白はブドウ品種が甲州のものとそれ以外を2種類程度ずつ。
赤はできるだけ高品質なものを軽め・重め各2〜3種類ずつ。
ロゼは2種類用意されているうち片方を飲む。
極力、飲んだことのない造り手のものを飲む。
※価格は750mlボトルを現地で購入した場合のもの
白ワイン
1.「ハナミズキブラン」奥野田葡萄酒(山梨県・塩山) 2,750円
2.「光 甲州」ルミエール(山梨県・笛吹) 3,800円
3.「パシュート シャルドネ」シクロヴィンヤード(長野県・東御) 4,200円
4.「ミエイケノ シャルドネ2019」ドメーヌ・ミエイケノ(山梨県・八ヶ岳) 6,050円
ロゼワイン
5.「鎧塚アミュレット」楠わいなりー(長野県・須坂) 2,750円
赤ワイン
6.「ミエイケノ ピノ・ノワール2019」ドメーヌ・ミエイケノ(山梨県・八ヶ岳) 6,380円
7.「ミエイケノ Prive 2017」ドメーヌ・ミエイケノ(山梨県・八ヶ岳) 終売
8.「ミエイケノ メルロー 2019」ドメーヌ・ミエイケノ(山梨県・八ヶ岳) 6,050円
9.「登美 赤」サントリー登美の丘ワイナリー(山梨県・甲斐) 16,000円
10.「あけの」グレイスワイン/中央葡萄酒(山梨県・勝沼) 7,000円
ヴィンテージは不明のものが多かったです……というか、ワインリストのカードだけ写真に撮って、機械にセットされたボトルまでは写真に収めていませんでした、残念。
上記の他に用意されていたワインで覚えているのは、甘口の白が1種類あったこと、白でピノ・ブランやソーヴィニヨン・ブランのワインがあったこと、赤はメルローが多かったような気がすること、以前訪れたダイヤモンド酒造(山梨県・勝沼)の白があったこと、くらいでしょうか。さすが、バリエーションが多彩でした。
レビュー
10種類のワインを、共通点のあるものどうしに区切ってレビューしていきます。
なお、前提として自然派(と呼ばれる)ワインが多いです。
白・甲州(1と2)
1:ハナミズキブラン
軽めの甲州。いわゆる樽熟成なしのスタイルで、さらっとして飲みやすいです。
味わいはまさに甲州の典型という感じ。穏やかな香りは白い花や、ゆずやすだちのような和柑橘。軽やかな酸味に、ほのかな苦味のバランスが飲み進めやすい。この手のさっぱりした白ワイン、(私は)家に必ず一本は用意したいところです。
だしで煮たカブとか、山菜やきのこを使ったおひたしや天ぷらが食べたくなります。
2:光 甲州
樽熟成された甲州。(シャルドネなどの品種と比べれば)ボディは軽めですが、樽なしの甲州と比較すると、熟成されて厚みが増します。ウイスキーやブランデーを思わせるような香ばしい樽の香りがあると思いました。野菜より肉が食べたくなるような味わいです。塩味の焼き鳥とか。刺身もいけるだろうか、という期待があります。
なお、大正時代には宮内庁御用達となったワインとのこと。
白・シャルドネ(3と4)
3:パシュート シャルドネ
優しいフルーツ感とパンのような酵母の香り。厚めのボディだけどリンゴのような酸がしっかりあって引き締まっています。無補糖、無補酸、ノンフィルター。2019年が初の自社醸造ヴィンテージとのことで、個人的に今後も注目していきたいと思いました。
4:ミエイケノ シャルドネ
酵母、バター、パン、桃、アプリコット、パイナップル……とさまざまな香りがします。アメリカの樽ありシャルドネを思わせるようなスタイル。こちらもリンゴのような酸があることで、後味はさっぱりとまとまります。リゾットとか、生クリームの入った料理が合う気がします。
八ヶ岳にあるワイナリーということで試飲した場所に近く、このワイナリーのラインナップが色々飲めました。オンラインだと普通に売り切れていて入手困難なため、八ヶ岳に行って飲むか購入するかしないと味わえないという……人気の日本ワインについて回る苦悩(後述)の片鱗がここにも見えました。
ロゼ(5)
※写真右がロゼ
5:鎧塚アミュレット
メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種を複数使用したロゼワイン。レッドチェリー、ブラックチェリー、酵母っぽさがあります。香りにはチェリーの甘さがありつつ、味わうと杉やシダ、ハーブのようなグリーンノートもやってきます。ブドウ畑は除草剤不使用の方針で、いわゆる「自然派」っぽい感じのあるワインです。たしかに、ほっこりする味わいだなーと思います。
軽めの赤(6と7)
6:ミエイケノ ピノ・ノワール2019
ラズベリー、ブルーベリー、生肉(テイスティング用語です念の為)、スミレ、紅茶の香り。軽快でバランスがいいです。日本のピノ・ノワールはそれほど経験ないですが、爽やかですよね。温度変化で香りが変わっていくようすを追いかけたいところですが、飲みやすくてすぐに飲み切ってしまいそうなワイン。こちらも「自然派」です。ピノ・ノワールにローストビーフは王道ですが、こちらのワインなら鶏ハムとかが合うのかなーと思いました。
7:ミエイケノ Prive 2017
ブルーベリー、ブラックベリーの香りに、シダのニュアンス。口に含むと最初にフレッシュなフルーツの味わいが広がりますが、徐々に森の茂みのような香りへと移行します。オークの香りも。ブドウ品種はメルロー主体でミディアムボディとのことですが、仏ボルドーのものと比べればやや軽快な方。あと口に入れたときのテクスチャがやわらかくて心地いいです。チーズを合わせるならクリームチーズが食べたいと個人的には思います。
重めの赤(8、9、10)
8:ミエイケノ メルロー 2019
ブルーベリー、チェリーやキャンディのような甘い香り。メルローらしい土やグリーンの香りもあるけれど、酸がはっきりしていて軽快。赤系果実の雰囲気が強めなのでピノ・ノワールに近い印象です。雑味がなく、果実の成熟度は高い。このワインは飲む時の温度によっても印象が変わってきそうです。それから想像ですが、銀だらの西京漬けと合わせたらおいしいかもしれません。
9:登美 赤
ブドウ品種がメルロー、プティ・ヴェルド、カベルネ・ソーヴィニヨン。まさにそんな感じの香りです。具体的に言うとまずピーマン香。そしてブラックベリー、カシス、針葉樹、シダに土、リコリスやナツメグ、オークなど。ボルドーワインの雰囲気をまとっています。すごく正統派。まろやかな酸と、なめらかでビロードのような(テイスティング用語です)全くザラつかないタンニンが日本のワインらしいと思います。フルボディと書かれていましたが、フルボディの中ではあっさりめかなと思います。個人的にタンニン強いものは少し苦手なので、これくらいがいい感じに飲み進められそうです。ちなみにこの銘柄が、今回の全試飲ラインナップ24種中で(ボトル購入時の価格が)最高額でした。
10:あけの
こちらもボルドーブレンド。メルローのシダ感や、カベルネ・ソーヴィニヨンのカシスがはっきり感じ取れます。ロースト香というかカラメル香というか、ほろ甘苦い香ばしさが特徴的。ヴィンテージ不明ですが熟成のためでしょうか。ボディがしっかりとしていてバランスがよい、飲みやすい赤ワインです。こちらもフルボディの分類とされています。カベルネ・フランという品種が入っていますが、9と比べてピーマン香は気になりませんでした。合わせる食べ物は豚の生姜焼き、すき焼きなどがいいかなと思います。
共通点から、日本のスタイルが見えてくる
日本でワイン用に収穫されるブドウ品種は、白なら甲州やナイアガラが多いです。たまにそれ以外(シャルドネ、ケルナー、その他新品種など)。赤はマスカット・ベーリーAが最も多く、コンコード、デラウェア、国際品種のメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどが次いで多いです。
欧米のワインと日本のワインの違いは、同じブドウ品種でも日本のワインになるとさっぱりとした味わいになる傾向があることだと思います。
今回試飲したワインも、全体的にそういった印象がありました。
そうした日本のワインに共通する部分が、国際的に見た「日本のスタイル」となるのでしょうね。色々なワインを比較したときの共通点にも注目すると面白いです。
そもそも自宅で飲んでいる時に複数のボトルを開けて比較……なんて方法、あまりする機会はないのでは。私は試験対策のときくらいでした。
それだけに、多種類を一度に比較できるチャンスはとても貴重で楽しいものです。
美味い日本ワインは争奪戦
希少で品切れ続出の高品質ワインたち
日本のワインは味が淡いとか、よく言われていますが、、中にはとても品質が高くて国際水準に十分かなうものもあります。
ミシュラン星付きレストランで採用されている日本ワインだって色々あるんです。
ただ、そうしたワインは生産数が少ないことから市場にはほとんど流通しない場合も多く、飲むためにはある程度の運、労力、特別なコネクションなどが必要になることも。
ワイナリーの公式サイトで通販できるものもたくさんありますが、リリース即完売ということも多々。
ワインラバーどうしで少ない生産本数を奪い合っている感はありますね。
でもそうしたマニア垂涎のワインを知っていくと、なかなか後戻りはできなくなっていくような。すでにワイン沼に片足つっこんでます。
本当は教えたくない、おすすめワイン
日本のワインで、高品質なものは価格も高いことが多いように感じます。ブドウを厳選していたり、少人数で手間暇かけて丁寧に造っていることが関係するのかもしれません。
海外からの輸送コストなどを上乗せして販売している輸入ワインより、ずっと高く感じることも。
そんな中、高品質で値段の張らない日本ワインを見つけると嬉しくなってしまいます。
生産地のワイナリーまで行けば買えるものも多いため、訪れたら必ず買いたいおすすめワインがあります。
読んでくださった方に、ここで少しだけご紹介。
・山梨県・勝沼の原茂ワイン、甲州樽熟成とアジロンが気に入っています
・山梨県・勝沼のダイヤモンド酒造、甲州もマスカット・ベーリーAも品種の良さが生きてるしっかりした味
・長野県・小布施の小布施ワイナリー、ちゃぶ台ワインからフラッグシップまで素晴らしい
これらはまだ買える方だと思います(時季にもよりますが、ワイナリーへ行けば購入可能)。
現地に足を運ぶことがこんなに大事なんだと、私はここ数年で痛感しました。
行楽シーズンには、八ヶ岳をはじめとする各地へワイン探しの旅もいいかもしれませんね。
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