アルコールで死ぬ菌死なない菌

2022年2月15日

※過去記事のため、新型コロナウイルスについては記述していません。
リンク切れの出典とアルコールの至適濃度について、記載を更新しました。

石けん手洗いかアルコール消毒か

風邪を起こす微生物(ウイルス・細菌)には手洗いが有効と言われていて、
感染症予防にはまず石けんでの手洗いが大事ですよね。

石けんにも色々あって、殺菌除菌と効果の程度に種類があります
(殺菌・除菌については過去記事食中毒と殺菌(1))が、
手洗いの一番の効果はなんといっても、微生物を物理的に洗い流せること。

ちなみに風邪の原因となるのはほとんどウイルスと言われています。
とはいえ大人は細菌性の風邪もよくあるようで、
風邪で抗菌薬(抗生物質のこと。細菌には効くけどウイルスは殺せない)を処方されることが多々あります……
※ウイルスと細菌の違いについてはこちら(AMR臨床リファレンスセンターHP)

ですが、インフルエンザノロウイルスなど
かかるとやっかいな感染症には
石けんでは効かないものがあります。

そういう微生物にはアルコール消毒塩素消毒が有効で、
公共施設なんかでも玄関に手の消毒用アルコールが置かれています。
感染症予防をしっかりとしたいなら、
石けん手洗い+アルコール消毒を行えば大体大丈夫でしょう。
(アルコールで死なない微生物もいますが、詳しくは後述します)

消毒剤の種類と強さ

消毒に使われるものにはアルコール塩素系などがあります。
アルコールはエタノール、イソプロパノールがあります。
塩素系には色々ありますが、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトンなど)が身近です。
このほか、ポピドンヨード(イソジンなど)も消毒に使われます。

それぞれ消毒の際に有効な幅が異なり、
下の図のように、塩素系はアルコールより強力なものがあります。
アルコールと塩素系の最大の違いは、人の皮膚に使えるかどうかです。

※食中毒などを起こす細菌とウイルスについては過去記事をご参照ください。
食中毒と殺菌(2)
食中毒と殺菌(3)

インフルエンザノロウイルス消毒薬に対する抵抗性が比較的強いので
普通の石けんでは死にません
でも、高濃度のアルコールイソジン、さらに強力なミルトンなら
問題なく対処できるというわけです。

ボツリヌス菌セレウス菌のような芽胞細菌がつくる芽胞は非常に頑丈で、
熱湯消毒などでは予防できないことを以前紹介しました。
(だからこそカレーなど煮込み料理にも潜んでいて重大な食中毒を引き起こすのです)
これらの殺菌にはミルトンなどの強い塩素消毒剤が有効です。

アルコールは濃度によって効き目が大きく異なる

なお、消毒するときのアルコールの濃度は重要です。

アルコールは揮発するので、長時間放置すると濃度が下がります
殺菌に有効なアルコール(エタノール)濃度は40%以上とされており、
最適な濃度は70%ということです。
濃度が高すぎると殺菌効果が下がるのは、
「エタノールの疎水基同士の結合により細菌に対して作用し難く」なるため。
図の出典より)

日本薬局方では 76.9〜81.4 v/v%、WHOガイドラインでは 60〜80 v/v%とされていて、
低すぎても高すぎても殺菌効果は期待できません静岡県薬剤師会HP)。
なお、アルコールは揮発するため、長時間放置すると濃度が下がります
国立感染症研究所では、身の回りの物品を消毒するには
70%のアルコール0.05%の次亜塩素酸ナトリウムで拭き取ることが望ましいとし、
「60%のアルコール濃度の製品でも消毒効果があるとする報告もあることから、
70%のアルコールが手に入らない場合には、60%台のエタノールによる清拭も許容される」
としています。

 

ウイルスも種類によってアルコール耐性が弱いものから強いものまでいます。
インフルエンザとノロウイルスでは、インフルエンザの方がアルコールに弱いです。
健栄製薬HPの図2より)

この違いは、ウイルスがエンベロープという外殻を持っているかどうかによります。
外殻はリン脂質でできているので、アルコールに弱いです。
したがって、「エンベロープを持つウイルスの方がアルコールに弱い」と言えます。
実際、インフルエンザにはエンベロープがあり、ノロウイルスにはありません。
ちなみにノロウイルスをアルコール消毒する場合は30秒くらい必要なようです。
大阪大学研究ポータルサイトReSQU
原著論文:Sato, S., Matsumoto, N., Hisaie, K., & Uematsu, S. (2020). Alcohol abrogates human norovirus infectivity in a pH-dependent manner. Scientific reports, 10(1), 1-10.)

アルコールで死ぬ菌死なない菌まとめ

アルコール消毒の話を長々としてきました。
普通の細菌は基本的に石けんアルコールを使えば殺菌可能で、
ウイルス高濃度のアルコール塩素系消毒剤でしっかりと殺菌すればよい
ということになりますが、
昨今、細菌でアルコール消毒剤に耐性のあるもの(エンテロコッカス)が発見されたりしています。
「ケアネット」2018/8/29記事
原著論文:Science translational medicine. 2018 Aug 01;10(452); pii: eaar6115.)

そして、何よりも言いたいのは実は
「手洗いで物理的に微生物を洗い流すのが一番基本的でかなり有効」
ということです。
正しい手洗いの仕方や、手洗い以外の予防方法は、気になったら調べてみてください。

おまけ

ところで、インフルエンザノロウイルスって表記統一の仕方が気になりますね笑
この記事では簡略化のため
インフルエンザという感染症もインフルエンザウイルスも「インフルエンザ」、
ノロウイルスによって起こる胃腸炎もノロウイルスも「ノロウイルス」としています。
ノロウイルスは正確には病気の名前ではないのです。ややこしいですが)
厳密には使い分けられるべきものだと思います。

例えば
「インフルエンザ感染症」と「インフルエンザウイルス」、
「ノロウイルス感染症」と「ノロウイルス」
のような表記で区別すると分かりやすいですね!