校正と四つ葉探しと脳トレ
校正の初心者向けに、「校正トライアル問題」という練習問題をアップしています。
そのかたわらで、趣味的に「四葉のクローバー探し」というおまけページもアップしているのですが
実際、この四葉探しが校正作業に役立つ気がしてなりません。
四つ葉探しと校正の手順
子どもの頃から四つ葉を探すのが得意というか好きで、
自分なりに見つけ方のコツをつかんでいるのですが
この「見つけ方のコツ」というのが、校正作業で誤りなどを見つける時とよく似ているんです。
(もちろん校正のときは毎回異なる校正ルールが提示され、それに沿って作業するので、一辺倒なやり方でOKなわけでもありませんが)
私の場合は基本的に
- 全体を見ながら、細部をチェックしていく
- よくあるパターンを覚えておいて、そのイメージに合うものを探す
- ざっと見ていて気になったものを、じっと注意深く見る
という原則を持っています。
どれも慣れが必要ですが、
クローバーの原っぱに立つときも校正紙に向かうときも、
いつもこういう風に見ている気がします。
全体を見ながら、細部をチェックしていく
最初は全体を眺めます。そこで違和感を覚えた部分があれば必ず注目すること。多分そこに何かあります。
人の脳は、視野の端っこにあるものでも視覚情報として無意識レベルで認識しているそうです。
(根拠となる出典は特にありませんが、俗説レベルではよく言われていますね)
何だか気になるということは、おそらくスルーすべきでないものがあるのではと私は思っています。
よくあるパターンを覚えておいて、そのイメージに合うものを探す
過去の経験から「こういう特徴があると四つ葉の可能性が高い」といったパターンがあれば、それを探します。
例えば「葉っぱの付け根の部分を見た時に、葉の出ている方向・角度がせまい」とか。
校正のときなら、さっき「筋繊維」を「筋線維」に直したから「筋○○」という漢字3文字が見えたら注意しよう、となります。
こういうとき、ワーキングメモリをすごく使っている気がします。
校正は一時的に記憶を保持しつつ同時に処理する作業ですから、まさにワーキングメモリをフル活用しているなあと思います。
ざっと見ていて気になったものを、じっと注意深く見る
1.で全体を見ていて気になったものや、普通に文章を読んでいて「え?」と思った部分があったら、よく見ます。
ここで初めて注目し、考えながら見ます(文章はちゃんと読み進めていますよ。校正すべき点について考えるということです)。
2.のような「よくあるパターン」に当てはまっているか?とか
しげしげと見て、それは四つ葉か?(あるいは、指摘を入れるべき部分か?)と確認します。
もし探しているものでなければ、先へ進みます。
この一連の流れは、慣れてくればスピードが上がりますし、切り替えも早くなります。
ワーキングメモリを鍛えると役立つ
2.でも実感すると書きましたが、ワーキングメモリはとても役に立つと思います。
ワーキングメモリとは「短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力」のことで、
視空間性のものと、言語性のものがあります。
校正のときには両方使っているような気がします。
全体を見て違和感を感じるものは指摘するほか、
レイアウトや表記の統一を見るときには一度「正しいもの」をインプットする場面が多々あります。
読んでいて多い方の表記に統一するということもありますが、
「売り上げ」でなく「売上」で統一するんだな、などとどこかのタイミングで覚えておくのが大事。
そして、読み進める中で該当の表現を見かけたときに、そのルールを思い出して指摘を入れます。
ワーキングメモリを鍛える方法は色々あります。
web検索してみると、認知症予防や幼児教育のトレーニングなんかが出てきますが
こういう簡単なもので大丈夫みたいです。
「脳トレ」という言葉が流行ったこともありますが、これもワーキングメモリの強化を図るものでした。
手っ取り早いのはトランプの神経衰弱とかですかね。
最近やってませんが、私は親戚の子ども相手でも真剣に勝ちます笑
ちなみに、もっと詳しくワーキングメモリについて知りたい方は次の項目をご覧ください。
校正についての記事はここまでです。では〜。
ワーキングメモリについての詳しい情報(飛ばし読み可)
ワーキングメモリとは「短期記憶に注意制御を加えたもの」といわれることもあり、知能とは異なります。
そもそも知能には流動性知能と結晶性知能というものがあり、ワーキングメモリは流動性知能を測る指標にもなっています。
※流動性知能:これまでに遭遇したことない状況で、既存の知識では解決できない問題を解決する能力(暗記、計算など)
※結晶性知能:これまでの経験と近い状況で、獲得した知識を用いて問題を解決する能力(料理など)
ワーキングメモリは国語・数学・理科と関連していて、ワーキングメモリ課題には次のようなものがあります。
- 文字の記憶と計算を同時に行う
- 指定されたものだけに注意を向け、不要な情報には注意を払わない
- 複数の情報に同時に注意を向ける
- 長期記憶から必要な情報を首尾よく取り出す
知能が高い人はワーキングメモリの課題成績が良いと報告されており、
ワーキングメモリを鍛えることで知能や認知機能を高め、維持しようという取り組みも各方面で行われています。
ただし、ワーキングメモリのトレーニングには
「覚え方・処理の仕方」を鍛えるもの(ストラテジートレーニング)と
「一度にこなせる容量」を鍛えるもの(コアトレーニング)があり、
処理の仕方をトレーニングした場合、練習したのと同じ方法が使えない場面では効果が出ません。
そのため、ワーキングメモリ容量を増やすコアトレーニングが知能や認知機能向上に関係すると考えられています。
このコアトレーニングによく用いられるのがNバック課題(あるいは二重Nバック課題)という手法で、
「脳トレ」で有名な川島隆太教授も推奨しています。
スマホアプリなどでもNバック課題ができるものがあります。気になったら検索してみてください。
DSソフトの「脳トレ」「鬼トレ」もNバック課題ですし、
メンタリストのDaiGoさん監修のアプリ「DNB」でもNバック課題ができます。
なお、Nバック課題をはじめとするワーキングメモリトレーニングには
効果や手法などさまざまな点で限界があることも指摘されています。
頭の体操にはとてもいいと思いますが、知能や校正力が直接的にアップするかまでは保証されていませんのであしからず!
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